投資を始めて3年。情報収集に費やす時間が、気づけば毎日2〜3時間になっていた。
企業の決算資料を読み込み、経済ニュースをチェックし、Xで投資家の意見を追う。でも情報が多すぎて、肝心の「投資判断」にたどり着く前に疲弊していた。本業のエンジニアリングに支障が出始めたとき、これはまずいと思った。
そこでChatGPTを投資情報収集に組み込んでみた。最初は「使えない」と感じた。質問が悪かったから。でも試行錯誤を重ねた結果、情報収集の時間が1日30分以下になった。判断の質は落ちるどころか上がった。
この記事では、ChatGPTで投資情報収集を効率化する具体的な手順を紹介する。失敗から学んだコツも包み隠さず書いた。明日から使える実践的な内容になっている。
ChatGPTで投資情報収集が劇的に変わる理由
従来の投資情報収集は「検索→読む→メモ→整理」の繰り返しだった。
例えば「半導体業界の動向」を調べるとき、Google検索で10〜20記事を開き、重要そうな箇所をマーカーで引いて、Notionにまとめる。この作業だけで1時間以上かかる。しかも情報が散らばっているから、全体像がつかみにくい。
ChatGPTなどの生成AIを使うと、このプロセスが一変する。
去年の秋、エヌビディアへの投資を検討していたとき、ChatGPTに「エヌビディアの競合優位性を、技術面とビジネスモデル面から整理して」と聞いた。返ってきた回答は、CUDA、データセンター向けGPU、ソフトウェアエコシステムという3つの軸で構造化されていた。検索で得た断片的な情報が、一気に「理解できる形」になった。
ポイントは情報を集めるツールではなく、思考を整理するパートナーとして使うこと。ChatGPTは検索エンジンじゃない。自分の頭の中にある情報を言語化し、構造化し、問いを深めるために使う。
最初の1ヶ月は失敗の連続だった。「トヨタについて教えて」みたいな抽象的な質問をして、教科書的な回答しか得られなかった。でも質問の精度を上げると、見える世界が変わった。
投資情報収集でChatGPTを使う3ステップ
実際に私がやっている手順を公開する。
ステップ1:情報の「前処理」をChatGPTに任せる

決算資料やニュース記事を読む前に、ChatGPTで要点を抽出させる。
具体例を出そう。ある企業の決算短信PDFを読むとき、全文を読むと30分かかる。でもChatGPTに決算資料のテキストを貼り付けて「売上・利益の変化、特筆すべき事業トピック、リスク要因を箇条書きで」と指示すると、3分で核心がつかめる。
実際に2024年12月、ある小型株の決算分析をしたときの話。決算短信を貼り付けて上記の質問をしたら、「営業利益率が前年比2ポイント改善。ただし原材料コスト上昇リスクを開示」という重要な情報がすぐに見つかった。これがなければ、利益率改善を過大評価していたかもしれない。
注意点は、ChatGPTの回答を鵜呑みにしないこと。特に数字は必ず原文で確認する。AIは計算ミスをするし、文脈を誤解することもある。僕はChatGPTの出力を「下読み」として扱い、重要な箇所は必ず元資料に戻って確認している。
ステップ2:問いを深めるために対話する

投資で大事なのは「何を知っているか」より「何を問うか」だと思う。
例えば「この企業の成長ドライバーは何か?」という問いに対して、ChatGPTは一般的な回答をする。でもそこから「では、そのドライバーが失速するリスクは?」「競合も同じドライバーを持っているのでは?」と問いを重ねると、思考が深まる。
先月、ある消費財メーカーを分析していたとき。最初は「ブランド力が強み」という当たり前の結論だった。でもChatGPTに「ブランド力を定量的に測る指標は?」と聞いたら、広告宣伝費率、リピート率、プレミアム価格の維持率という3つの視点が出てきた。それを元に競合と比較したら、実はブランド力が思ったほど強くないことが分かった。投資を見送って正解だった。
この「問いの連鎖」がChatGPTの本質的な使い方だと思う。検索エンジンは答えを返すだけだが、ChatGPTは問いを深める壁打ち相手になる。
ステップ3:情報を自分の投資基準で整理させる
集めた情報は、自分の投資判断基準に沿って整理する必要がある。
僕の投資基準は「成長性・収益性・割安性」の3軸。ChatGPTに「この企業を私の投資基準で評価して。成長性は売上成長率とTAM、収益性は営業利益率とROE、割安性はPERとPBRで判断する」と指示すると、情報が自動的に整理される。
実際に使っているプロンプトの一部を公開する。
「以下の企業情報を、私の投資基準で評価してください。
【成長性】売上成長率10%以上、TAM拡大余地あり
【収益性】営業利益率15%以上、ROE15%以上
【割安性】PER20倍以下またはPBR2倍以下
各基準について◎◯△で評価し、総合判断を述べてください」
このフォーマットに沿って出力してもらうと、複数銘柄の比較が圧倒的に楽になる。Excelで管理していた頃は1銘柄の整理に10分かかっていたが、今は3分で終わる。
ただし、これも盲信は禁物。ChatGPTは最新の株価データを持っていないから、PERやPBRは自分で計算し直す必要がある。僕はTradingViewやYahoo!ファイナンスで最新データを確認してから最終判断している。
ChatGPT活用で失敗した3つのパターン

良いことばかり書いても仕方ないので、失敗談も共有する。
失敗1:古い情報を信じて判断ミス
ChatGPTの学習データには期限がある。2024年初頭、ある半導体企業について質問したとき、ChatGPTは2023年前半の情報を元に回答した。でも実際には2023年後半に大きな事業転換があり、投資判断を誤った。損失は約8万円。
対策は常に一次情報を確認すること。ChatGPTの回答は「仮説の出発点」として扱い、企業のIRページや最新の決算説明会資料で事実確認する。面倒だけど、これをサボると痛い目に遭う。
失敗2:質問が曖昧で使えない回答しか来ない
最初の頃、「この企業はどう?」みたいな質問をして、Wikipedia的な一般論しか返ってこなかった。ChatGPTは質問の質に比例して回答の質が変わる。
良い質問の例:「この企業の営業利益率が同業他社より5ポイント高い理由を、コスト構造と価格戦略の観点から分析して」
悪い質問の例:「この企業について教えて」
具体的で、判断基準が明確で、視点が絞られている質問ほど、有用な回答が返ってくる。これは投資だけでなくChatGPT全般に言えることだと思う。
失敗3:数字の計算ミスを見逃す
ChatGPTは計算が苦手だ。特に複雑な財務指標の計算は間違えることがある。
去年、ある企業のROE計算をChatGPTに任せたら、純資産の数字を読み間違えて全く違う値が出てきた。それを信じて投資判断しかけたが、念のため自分で計算し直して気づいた。
数字は絶対に自分で確認する。これは鉄則。ChatGPTは言語処理には強いが、計算処理は人間のほうが正確なことが多い。僕はExcelで自動計算シートを作って、数値だけは自分で管理している。
ChatGPTを投資に使う際の3つの注意点
効率化は素晴らしいが、リスクもある。
まず、ChatGPTは投資助言ツールではない。金融商品取引法上、AIによる投資助言は規制対象になりうる。ChatGPTはあくまで情報整理のツールとして使い、最終判断は自分でする。
次に、情報の鮮度を常に疑うこと。特に株価、為替、金利などのリアルタイム性が重要な情報は、必ず別のソースで確認する。僕はBloombergやロイターのニュースを並行してチェックしている。
最後に、過度な依存は思考力を奪う。ChatGPTに頼りすぎると、自分で考える力が衰える。僕は週に1回、ChatGPTを使わずに企業分析をする日を設けている。自分の頭で考える習慣を維持するためだ。
AIは便利だが、投資判断の主体は自分であるべきだと思う。
まとめ

まずは次に分析する企業で、決算資料をChatGPTに貼り付けて要点整理から試してみてほしい。質問のテンプレートは上記のステップ3を参考に、自分の投資基準に合わせてカスタマイズするといい。
ChatGPTは魔法の杖じゃない。でも使い方次第で、投資の質と効率を両立できる強力なツールになる。私自身、まだ試行錯誤中だ。もっと良い使い方を見つけたら、またこのブログで共有したいと思う。

